Orthognathic Surgery
顎変形症とは、あごの骨に骨格的な問題があり、前後・左右・上下にずれることで噛み合わせや顔貌に悪影響を及ぼしている状態です。
歯列矯正治療のみでは噛み合わせを改善できないので、顎変形症手術を併用して骨の大きさの不調和を整え、良好な噛み合わせへと改善します。
これを外科矯正(外科的矯正治療)といいます。外科矯正を行うと決まった時点で一連の治療が保険適応となります。
外科矯正を受けることができる施設は限られており、 “顎口腔機能診断施設” の指定を受けた歯科医院でのみ可能です。
外科矯正とは
外科矯正とは、文字通り外科手術を伴う矯正治療です。手術であごの骨を切除するなどして、上下のあごのアンバランスを解消します。
出っ歯・受け口・開咬・顎のゆがみなどをダイナミックに改善することができる治療法です。外科矯正は、具体的に以下のような歯並び・かみ合わせの異常に適応されます。
適応症例
顎変形症の治療では、始めから手術を行うわけではありません。
まずは、外科矯正用の精密検査・あごの運動検査を行った上で、患者さまが外科矯正の適応であるかどうか診断する必要があります。
当院で外科矯正の適応であると診断された後は、手術を担当する連携医療機関を受診して、手術に関する説明を受けていただきます。
矯正治療は矯正歯科が、あごの手術は形成外科や口腔外科が担当し、連携しながら治療を行います。
外科矯正を始めるとなった場合、手術前にあらかじめ歯並びを整える必要がありますので、まずは通常の表側矯正を1年〜1年半程度行います(術前矯正)。
術前矯正終了後に、連携する医療機関にてあごの骨の手術を受けていただきます。 術後は10日〜2週間程度の入院が必要です。手術によって骨格的な異常が改善された後、術後矯正で細かい歯並びの調整などを行います。
01
検査・診断(顎機能検査等も含む)
矯正専門医により外科的矯正手術の適応か診断を行います。また手術を行う上で全身に問題がないかスクリーニング検査を行います。
02
術前矯正(1~1年半程度)
外科矯正手術の適応と診断された場合には、まず術前矯正治療を行います。
これは手術後の骨の治癒が速やかに進むために、上顎と下顎の安定した固定が必要であり、そのためには咬み合わせがある程度緊密になっていなければならないからです。
03
外科手術(入院も含めて10日〜2週間程度)
手術開始前に、気分をリラックスさせるお薬を注射し、手術場に運ばれます。手術室にて麻酔医が全身麻酔をかけて手術が施行され、麻酔から覚醒したら帰室となります。
04
術後矯正(6~12ヶ月程度)
通常、術後10-14日間で退院となります。退院後は定期的に通院して術後経過を診察しながら術後矯正治療を行います。
※最終的な咬み合わせを安定させるための矯正治療で治療期間には個人差があります。
05
保定
歯の移動を終えると、矯正装置をすべて取り外します。装置の撤去後は、後戻りを防止して歯並びを安定させるために、保定装置(リテーナー)を使っていただきます。
このように、顎変形症の治療がすべて完了するまでには少なくとも2~3年かかるため、
信頼できるドクターに任せる必要があります。
外科矯正のメリット
01
通常の矯正治療では対応できない症例にも適応できる
治療が困難なケースでも外科矯正なら外科手術にてあごの骨を適切な位置に調整したうえで歯列矯正すれば、歯の噛み合わせや歯並びを改善できます。
02
歯並び、かみ合わせ、顔貌の異常を大きく改善できる
一般的な矯正治療では歯並びだけの改善にとどまりますが、外科矯正は骨格そのものを改善するため、口元の歪みなどに対する輪郭の悩みも改善されます。
生まれつき顎の骨格が大きくずれている方も、外科矯正することで輪郭に大きな変化を感じられるでしょう。
03
健康保険が適用される
外科矯正の治療費に関しては患者様の状態や治療期間、手術内容、所得等によって大きくことなります。
健康保険で行われるため、特に外科手術に関しては高額療養費制度が適応されることで自己負担が抑えらます。おおよその目安にはなりますが、矯正治療費と手術・入院費のすべてをあわせて約40-70万円の範囲におさまることが多いです。
外科矯正のデメリット
01
全身麻酔が必要であり、入院が必要となる
外科手術を行うため、10日間ほど専門の病院で入院が必要になります。
02
全身麻酔の合併症により吐き気や嘔吐等の症状が生じる可能性がある
外科矯正は外科手術となるため全身麻酔下で実施されるため合併症のリスクがともないます。
現在では全身麻酔の安全性は医療の進歩により向上しており、これらの症状がすべての人に必ず出るというわけではありません。
03
手術後に知覚麻痺が生じる可能性がある
退院した後でも知覚麻痺が残る可能性があります。知覚麻痺とは感覚神経に障害が生じることで、主な症状は下顎の知覚麻痺では痺れや麻痺、口が開かないといったものです。
ただし、知覚麻痺として軽い痺れや麻痺が現れた場合でも、時間の経過とともに自然に治ることもあります。
04
入院前に数回、大学病院にて検査を行う必要がある
入院前にも手術を行うための準備を進めるため、大学病院にて検査を行います。
05
術後は顔が大きく腫れる
顎の骨を切除したりずらしたりすることにより、術後の副作用も考えられます。
副作用として多いのは、全身麻酔から覚めたあとに顔が腫れるたり痛みや発熱が挙げられます。
06
一定の条件を満たさなければ保険が適用されない
顎変形症の病名など指定症状(病名)がある場合でないと、保険が適用されません。
また厚生労働省指定の顎口腔機能診断施設で矯正歯科治療を受け、連携医療機関である指定の口腔外科病院で手術を行う必要があります。
費用はすべて健康保険の適応になります。 費用は患者様ごとに大きくことなりますが、通常は自己負担の総額が15〜40万円程度になることが多いです。